王道系時代モノ映画「ザ・レジェンド」がマダオだらけだった件
2015年6月12日から公開となる映画「ザ・レジェンド」。
ニコラス・ケイジとヘイデン・クリステンセン主演で、12世紀の中国を舞台にした作品です。
一言で顕すならば、王道的時代モノ用心棒剣劇といったところでしょうか。
今回、お声がけを頂き、公開に先んじて鑑賞させていただきました。
考えるな感じろ! を地で行く映画
基本的要素としては時代モノに分類される本作。
ストーリーをざっくり紹介すると、十字軍で最強を誇り、伝説と称される騎士・ガレイン(ニコラス・ケイジ)とジェイコブ(ヘイデン・クリステンセン)が、無益な戦いの日々に疲れ果てちゃって東へ東へと流浪。やがて中国にたどり着き、そこで王族の跡目争いに巻き込まれ、追われる身となった皇子と姫君の用心棒として戦っちゃうぜ! ◯◯無双だぜ! 的なものとなっています。
いわゆる時代モノですから、それはもう徹底的な時代考証がなされているのだろうな・・・と考えちゃいますが、はっきり言って考証? ナニソレ美味しいの? というくらい史実要素がほとんど入っていませんwww
作品中に出てくる状況、単語や地名から考えて、無理やり史実に当てはめるなら、おそらくガレインとジェイコブはノルウェー十字軍の騎士だろうっていうこと。時代的に中国は宋・徽宗の治世だろうということはわかるんですけどねぇ。
そもそもストーリー展開的に史実を下敷きにしちゃうと、整合性が取れなくなって破綻しかねないので、これはこれでいいのかなと思います。
全くもって憑拠のない歴史新説ファンタジーと思えばいいのです。
そういう意味で、タイトルのレジェンドって、“長い長い中国の歴史に、こんな伝説(=レジェンド)があってもいいじゃない。”的な想いがあるのかもしれませんね。・・・・・・いやないか。
いずれにしても、頭を働かせていろいろ考えながら観る映画ではありません。
単純に剣戟アクションを観て爽快感を感じるも良し、ストーリーに絡められた師弟、親子、兄弟、王と臣下、敵と味方の関係に秘められた感情を感じるも良し。とにかく考えずにストーリーの行間に込められた某かを感じ取ってもらいたい映画です。
渡る世間はマダオばかり
それにしても出てくるキャラクターが、やたらマダオばっかり。
まず、主役であるガレインとジェイコブがマダオ。
ガレインとジェイコブは出自こそ十字軍最強の騎士なわけですが、流浪の果てに中国に流れ着くと見事に落ちぶれているわけです。
落ちぶれちゃった理由は、非常にシリアスですし、宗教戦争で抱えた心的外傷もあって、そうなっちゃうのも仕方がないよねとは思いますけどね。
どっちにしても、酒に溺れちゃったまるでダメなオッサンに、トラウマから逃れるために”ケシの涙(アヘン)”に依存してしまったまるでダメなおにいさんへと大変貌を遂げているわけですよ。冒頭との落差がえらくひどい。
そして、皇帝の座を争うことになった皇子たちもマダオ。
武力・膂力がパねぇ長男は俺様気質で、性格的にも暴虐。そのくせどこか心が弱いんですよねぇ。
また、正式に次期皇帝に指名されたけど、長男の策略で追われる身となった次男。こちらは心根が優しく芯の強さもあるんですが、まだまだ子供故か、やや理想に走りがち。
長男次男ともにまぁダメな皇子たちなわけです。
場面写ではそう見えませんけど。
そもそも父である皇帝が、息子である皇子たちの育成に失敗し、実子に殺されちゃうっていうまさにダメな王様(親父)なので、それも致し方ありません。
とにかく右も左もマダオばっかりなので、「ダメンズに弱いの(∀`*ゞ)☆」っていう女子は萌えまくれる可能性大。マダオだけどイケメンですからね。基本アクション映画ですけど、うら若き女子が観ても楽しめるのではないでしょうか。
誰が観ても面白かったと思える良作
“考えずに観て感じる映画”と断じてしまいましたが、その手の映画であるだけに、おそらく誰が観ても、一定的に面白かったと思える作品ではないかなと思います。
剣戟アクションはかなりクオリティ高いです。なにせ監督が数々の映画でスタントコーディネーターを務めたニック・パウエルですから、そこはかなりこだわったのだろうなと思います。
また、演者もキャリアのある人たちがキャスティングされているので、セリフ回し、表情、細かい感情の機微までしっかりと演じられています。
オール中国ロケというのもあって、中国大陸ならではの雄大な大自然の画もいいです。
脚本的にはやや山場に欠け、始まりから終わりまでがスルッと進行してしまう印象だったり、「これって伏線ちゃうの?」と思えるようなものが回収しきれてなかったりする感は否めないものの、考えずに観る分には十分楽しめるかなと。
最近は割りと続編を意識した結末を描いてしまって、「えっ、結局これってどうなるの?」みたいな作品が多い中、本作は割りとしっかり終わらせた感のあるラストとなっているので、最後の最後に考えこまされることもありません。
正直、冒頭でも書いたように歴史ファンタジーな作品で、いろいろツッコミどころの多い脚本ではありますが、それだけに映画鑑賞後に作品を肴に議論しがいがあるとも言えるので、むしろそこまでをパッケージとして、グループで観に行くことを薦めたいですね。
ちなみにですが、今回試写にお招きいただいた本作の配給会社であるプレシディオ(presidio00)さんのFacebookページでは、最新情報やプレゼント情報などを発信しているので、興味のある方はそちらもチェックしてみてください。