「世界農業遺産」ってなに? 日本で認定されている世界農業遺産まとめ
全然知らんかった!
世界遺産ならぬ「世界農業遺産」なんてものがあるんですね。
世間的な認知度がどの程度あるのかはさっぱりわかりませんが、僕は全然聞き覚えがありませんでしたよ。というわけで、「世界農業遺産」と、その認定遺産をサクリとまとめてみました。
世界農業遺産とは?
まず「世界農業遺産」とはなんぞや? っていう話。
正式名称は「世界重要農業遺産システム(GIAHS)」というらしく、認定は国連の専門機関である国際連合食糧農業機関(FAO)によって行われています。
このプロジェクトがスタートしたのは2002年からということで、すでに干支1巡。
伝統的な農業と農業によって育まれ、維持されてきた溜池や農地、水利施設といった土地利用、技術、文化や風習、風景、さらにそれらを取り巻く生物多様性の保全を目的としたもので、今のところ認定遺産があるのは日本を含めても十数カ国しかありません。
認定されるメリットは?
認定されたところは「サイト」と呼ばれてるんですが、この「サイト」になることは結構メリットがあるみたいですね。
基本的には世界遺産と同じような感じではあるんですが、まず国内のみならず国際的な知名度が高まる点。つっても、国内で「世界農業遺産」自体の知名度が微妙な気もしないでもないんですけど・・・。
そして、その知名度の高まりによる観光振興、さらに農作物の販売増に繋がることが期待されているようです。
このあたり、実際どの程度の効果があるものなのか、ちょっとわからんのですよね。
現地関係者に率直に伺いたいところです。
日本の認定サイト
日本は過去、2つの認定を得ていますが、昨日から石川県七尾市を主会場として開催されている世界農業遺産会議によって、新たに3つの認定を受け、全5サイトとなりました。
能登の里山里海
日本初の世界農業遺産。
石川県七尾市、輪島市、珠州市、羽咋市、志賀町、中能登町、穴水町、能登町が「能登の里山海山」として認定されています。
生物多様性の守られた農林漁法と土地利用、多様な生物資源、優れた里山の景観、伝統技術、文化祭礼といったものが評価されたとのこと。
トキと共生する佐渡の里山
「能登の里山海山」とともに認定された日本初の世界農業遺産。
農業生産システムに「トキと暮らす郷づくり認証制度」というのを導入しており、消費者連携をとって島全体に拡げている点、生物多様性保全型農業と農業経済の連携による環境保全体制を構築している点などが評価されたそうです。
阿蘇の草原と持続的農業
今年開催の世界農業遺産会議にて認定されたうちのひとつですね。
熊本県阿蘇地域で行われる野焼きなどで草原を守りながら受け継がれてきた草原活用農業、貴重な草原性動植物の保全、阿蘇特有のカルデラに見られる草原・農村景観の維持、さらには農耕祭事を中心とした伝統文化などが評価されたようです。
国東半島宇佐の農林漁業循環システム
先ほどの阿蘇と同じく、認定された3サイトのうちのひとつ。
国東半島というと陸の孤島で回峰行というイメージしか湧いてこないのですが、元々降雨が少ない環境ということもあり、江戸時代から小さな溜池を張り巡らせて、効果的な土地利用や水利用を実践しており、日本一の乾しいたけの生産、国内唯一の畳表材料となる七島イの栽培といったところが評価されたみたいですね。
静岡の茶草場農法
阿蘇、国東とともに認定されたうちのひとつ。
静岡県西部地域である、川根本町、島田市、掛川市、菊川市、牧之原市に点在している茶草場がまとめて認定されています。
お茶、と言えば静岡というくらい認知されているわけですが、そのお茶づくりのこだわりが里山の環境が守り続けられ、生物多様性を維持してきた点。希少種の多い植物相、日本有数の種の多様性といった点が評価されたようです。
世界農業遺産がゴールなの?
というわけで、以上が日本で認定されている5サイトになるわけですけど、報道を見ているとどうもすでに浮き足だっている感がしてますね。
現在日本の農業全体で叫ばれる後継者不足、農家高齢化といった問題があるわけですけど、関係者としては今回の認定をきっかけにこれらの問題を解消したいという思いがあるみたいですね。
とは言え、正直認定だけでそこまで多くの効果が見込めるものなのかというのは純粋に疑問を覚えます。
ストレートに言えば、世界農業遺産に認定されたからうまくいくわけではないでしょってこと。観光振興はともかくとしても、農作物のブランド化、ブランド向上といったのは認定がないところだって成功しているところは成功してますしね。
もちろん、認定されたこと自体は喜ばしいことですし、大変おめでたいことだとは思うんですけど、あまり浮き足立っちゃうのもいかがなものかと思うわけで。。
関係者の皆さんも重々ご承知だとは思うんですが、とりあえず遺産認定は通過点でしかないと思うので、世界農業遺産とか気負わずに頑張っていただきたいところです。